「雑草」が教えてくれること

images[11]

「雑草という名前の草はない」という、昭和天皇の大変意味深いお言葉があります。

私のように取り柄なき一般人は、このお言葉にどれほど勇気づけられたことでしょう。

とはいえ農業に従事する人々にとって、「雑草」は厄介でいまいましい問題の一つです。

 

でも、雑草の「本当の役割」を知ると、その考えは自ずと変わるのではないでしょうか。

雑草の「本当の役割」って?

千葉県富里市で自然農法を営む高橋博さんの言葉に耳を傾けてください。

resize2289[1](自然農法で豊かに実った稲の中に佇む高橋さん)

高橋さんが実践している「自然農法」とは、農薬・肥料によらずに植物と土の本来持つ力を

引き出す農業です。

「え、肥料も使わないの?!」と驚かれるそうですが、農薬や肥料の害が完全に抜けた

土地からは、本来の栄養バランスを持った健康な米や野菜が、

時には農薬や肥料を使った土地よりも沢山収穫されるとのこと。

今、徐々にですが全国に広がりつつあります。

 

高橋さんは、もう30年以上も自然農法を続けているその道の第一人者なので、

畑を見学に来る人が後を絶ちません。

訪れた人は雑草が一本も生えていない高橋さんの畑の美しさに驚き、

「どうして草が生えていないのですか?」と口を揃えて訪ねます。

その問いに、高橋さんはこう答えるのです。

「草は土を進化させるために生えるので、作物に適した土ができたら

自然と草はなくなるものですよ。」

 

 

たとえば、セイタカアワダチソウのような背の高い草は、

土を進化させるために自然に生えてくるものだそうです。

生えては枯れ、生えては枯れを何度も繰り返して土が進化すると、その草は消えて、

今度はヨモギやカラスエンドウのような背の低い別の草が生えてきます。

そして、その草も生えては枯れを繰り返して、

やがてハコベのような草が自然に生えてくるようになれば、

その土が作物を育てられる状態になったという合図なのです。

 

 

作物に適した土へと進化させる。

雑草、と私たちが無造作に呼んでいる草には、こんな大切な働きがあったのです。

どんなものにも「役割」がある、ということですね。

土から農薬や肥料を抜くのは、これまで使っていた量と質によるので、

一概にいつ抜ける、と言うことはできません。

でも根気よく耕し、土を空気に晒すことでだんだん抜けていくそうです。

そうして、農薬や肥料がすっかり抜けて微生物が元気に働く土から採れた野菜は、

市販のものより淡い色をして、栄養バランスのよいものになるとか。

 

 

「淡い色」? 何故?と不思議に思う方がいらっしゃるでしょう。

確かに緑の濃いほうれん草などは、いかにも栄養たっぷりに見えますが、

それは肥料によって作られた色なのです。

鮮やかな緑の野菜、甘くて大きい果実、といったものは純粋に天然のものではありません。

それは消費者のニーズに合わせて何代にもわたって掛け合わされ、

肥料によって人工的に大きく栽培された作物なのです。

 

バリ島に行ったとき、食事に出てくる野菜や果物の色と味が薄いのに驚きました。

トマトの赤もオレンジっぽく、すいかやパイナップル、マンゴーなどの

トロピカルフルーツが甘味が少なく、よく言えばさっぱり、

悪く言えば物足りないのです。

でも、日が経つにつれ、私たち日本人がいかに人為的に作られた果物や野菜の味に

舌が馴らされていたのか、と思うようになりました。

Exif_JPEG_PICTURE(バリの農園の「ふぞろいの」いちご)

雑草は、私たちに「この土地はまだ作物を育てられませんよ」と教えてくれていたのです。

 

同じく自然農法を推進している㈱ナチュラル・ハーモニー主宰者の河名秀郎さんは、

「土がきれいになればミミズがいなくなる」と言います。

土に分解するべきものがあるうちはミミズはいなくなりません。

本当に農作物に適した土はミミズが働かなくてもいいそうです。

農作業従事者にとっても「目からウロコ」の話ですが、

すべて実践済みの事実です。

 

現代農業は、どうやら今、大きく発想の転換をする時を迎えているようですね。

images[7]